Disc Review

Today / The Babe Rainbow (30th Century Records/Flightless Records)

トゥデイ/ザ・ベイブ・レインボー

オーストラリアのバイロン・ベイを本拠に活動するザ・ベイブ・レインボー。彼らのことを初めて知ったのはもう5年くらい前。「シークレット・エンチャンテッド・ブロッコリ・フォレスト」って曲のビデオをYouTubeで見たときだ。曲はもろ60年代のサイケ・ポップふう。映像はまさにヒッピー!って感じ。やばいカルト風味まで漂っていて。

ロサンゼルス本拠のエドワード・シャープ&ザ・マグネティック・ゼロズとかが、そのちょっと前に話題になったりしていたこともあって。ああ、こういうヒッピー・ムーヴメント・リヴァイヴァルみたいなものの波はオーストラリアにも広まっているのかぁ…と、ぼんやり楽しんでいたのだけれど。

その流れで2015年にファーストEPが出て。その後しばらく音沙汰がなかったので、企画ものっぽい感じで終わったのかなと思っていたら、どうやら現地のサイケ・フェスみたいなやつに出たりしながら着実に支持を広げていたらしく、ちょっとだけ間を置いて2017年に初フル・アルバムが出て。続いて去年、セカンド・アルバム『ダブル・レインボウ』が出て。で、今年になってからシングルとして新曲を着実にリリースし続けながら、このほどサード・アルバムにあたる本作『トゥデイ』へと至った、と。

先行シングルとして出ていたのは「モーニング・ソング」「サムシング・ニュー」「メニー・ムーンズ・オヴ・ラヴ」の3曲。どれもアコースティックな音像を基調にしたドリーミーなポップ・サイケというか、ちょっぴりドラッギーな香りも漂うサンシャイン・ポップというか。中でも5月ごろお披露目された「サムシング・ニュー」って曲が個人的にはいちばん好きで。よくYouTube見てました。

この曲のビデオクリップも、きれいなおねーさんたちが原っぱでキノコみたいなのを摘んでいたり、身体を青くペインティングしたメンバーがベース弾いていたり、シュールなアニメが挟み込まれていたり。もう、もろ。曲調はIIm7→Imaj7を繰り返すブルー・アイド・ソウルっぽい感じで。ニュー・アルバムの登場を心待ち…とまでは言わないけれど、まあ、それなりに楽しみにしていたものだ。

で、それら3曲も含むサード・アルバム。期待通り、というか、先行お披露目曲のムードをそのまま受け継いだ仕上がりだった。全体的に詰めが甘いというか、グルーヴがゆるいというか、そういうところもまたこの人たちの重要な持ち味。そこそこ洗練された音像のもと、思い切り力の抜けたクルーナー系の歌声がふんわり舞う曲ばかり。

君たちの狙いはいったい何なんだ? どこを目指しているんだ? と、ふと問いかけたくなったりもするけれど、もともとそんなのないのかもねー(笑)。環境汚染とか自然破壊とかに対するそれなりに真摯なメッセージを放つ曲とかも入ってはいるものの、同時に目的不明の長尺ラテン・フュージョンみたいな曲とか、終着点が見えないジャジーなアプローチの実験的な曲とかも入っていて。

その、なんだか無駄な感じとか、真面目なんだか不真面目なんだか聞き手に判断させない、ゆらゆらした手触りも含めてこの人たちの魅力なのかも。ゆらゆら楽しみます。

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