Disc Review

I'm A Bear In A Lady's Boudoir / Ukulele Ike aka Cliff Edwards (Air Mail Recordings)

アイム・ア・ベアー・イン・ア・レディーズ・ブードゥワー/ウクレレ・アイク(クリフ・エドワーズ)

ちょっと前にエアー・メイル・レコードから出たウクレレ・アイクことクリフ・エドワーズの紙ジャケ再発。今さらのタイミングですが。やっぱり個人的に思い入れの強い盤なので、紹介しておきましょう。1975年にヤズー・レコードからリリースされた復刻LPの紙ジャケCD化。ディズニーの名作『ピノキオ』で「星に願いを」を歌ったクリフ・エドワーズの20~30年代音源集だ。ウクレレを奏でながらほのぼのノスタルジックなメロディを歌い綴る名演ばかり。

大学生だった、確か77年ごろ、内容はよくわからなかったものの、ロバート・クラムが描くジャケットに惹かれて買ってみて。思い切りハマったものだ。実際はロバート・クラムが自らミュージシャンとして率いていた趣味趣味楽団、チープ・スーツ・セレネイダーズのセカンド・アルバムを先に買って。それにハマって。その流れで、同系統のレコード会社から出ていたこの盤にも手を出してみた、と。そういう感じ。クラムのジャケットなんだから、絶対にいいはずだと決め込んで買った。

タイニー・ティムやイアン・ホイットカムのようなウクレレ使いとしての後輩はもちろん、ハリー・ニルソンやジム・クウェスキンやジェフ&マリアあたりもきっとこのクリフ・エドワーズの楽曲に胸をときめかせていたんだろうなぁ…などと夢想しつつ、SP盤から起こされた、音質はひどいけれど、なんとも言えない温かみのある音像に酔いしれた。A面トップの表題曲をはじめ、「アイル・シー・ユー・イン・マイ・ドリームズ」「イット・ハッド・トゥ・ビー・ユー」「カリフォルニア・ヒア・アイ・カム」「スタック・オ・リー」、そしてB面ラストを飾る「アイム・ゴーイング・トゥ・ギヴ・イット・トゥ・メアリー・ウィズ・ラヴ」など、どんどん好きな曲が増えていった。その後、他社からリリースされているアンソロジーをあれこれ入手してみると、本盤に収められている楽曲群がけっしてクリフ・エドワーズの代表曲ばかりってわけではないことがわかってきたのだけれど。

でも、長年聞き込んできた盤なもんで。ぼくは今でもこの盤にいちばんの愛着を抱いている。絶品ジャケットを眺めながら聞くと、さらにメートルも上がります。

ちなみに今回の再発、“ロバート・クラム・アートワーク・コレクション”と題されたシリーズの一環だ。ヤズー・レコードがLP時代に復刻した盤の中から、クラムがジャケットを書いたものを全部で8枚、紙ジャケCD化。そのうちの1枚です。他に出たのは、陽気で猥雑なホウカム・ブルースの名演を集めたコンピ『プリーズ・ウォーム・マイ・ウェイナー』、ギターを膝の上に寝かせてポップなスライド・ギターを聞かせるケイシー・ビル・ウェルドンと、同じく膝にギターを寝かせ豪快なスライドをかますココモ・アーノルドの名演を、LP時代はそれぞれA面、B面に振り分けていた『ボトルネック・ギター・トレンドセッターズ・オブ・ザ・30's』、ジョージア・トムとタンパ・レッドが組んだホウカム・ボーイズの名演集『ユー・キャント・ゲット・イナフ・オブ・ザット・スタッフ』、ブルース・ハープをフィーチャーした名演を有名無名問わず集めた『ハーモニカ・ブルース』、ミシシッピ・シークスのメンバーとしても知られるボー・カーターの弾き語り音源を中心に編まれた、ちょっぴりエッチな『バナナ・イン・ユア・フルーツ・バスケット』、3大ジャグ・バンドのひとつ、メンフィス・ジャグ・バンドの隠れ名曲でマニアックに構成された2枚組『メンフィス・ジャグ・バンド』、ジェームス・P・ジョンソン、アール・ハインズ、キング・オリヴァー、コールマン・ホーキンス、ビックス・バイダーベック、ジェリー・ロール・モートン、デューク・エリントン、ファッツ・ウォラーらの戦前ジャズ・コンピ『ヤズー・ヒストリー・オブ・ジャズ』。

すべて思い出深いヤズー盤ばかり。ジャケットで選ぶとなると、やはり名作の誉れ高き『ハーモニカ・ブルース』かな。

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