至上の愛(アメイジング・グレイス)〈完全版〉/アレサ・フランクリン
ちょっと紹介が遅れましたが。
聞けば聞くほど感動が深くなるもんで。今年の4月ごろにリリースされたこの2枚組、遅ればせながらピック・オブ・ザ・ウィークにさせてもらいました。国内盤も6月末にリリースされたことだし。
泣く子も黙るクイーン・オブ・ソウル、アレサが彼女の重要なルーツであるゴスペルにストレートなアプローチを仕掛けた作品。72年、ロサンゼルスの教会で収録したライヴ盤だ。オリジナル・アナログ盤は2日にわたって行なわれたライヴから出来のいい演奏をセレクトして、オーバーダビングなどもほどこしたうえでリリースされていた。それはそれで、実に感動的な2枚組だったのだけれど。
今回のCDは2日にわたって行なわれたライヴの模様を、1日それぞれCD1枚ずつに完全収録。78分超えるくらいの分量入っているので、もう音が盤からこぼれそう。古いCDプレーヤーじゃかからないかも。コーネル・デュプリー、バーナード・パーディ、チャック・レイニーらによる演奏も、聖歌隊のコーラスも、ジェームズ・クリーヴランド牧師の深いスピーチと渋い歌声も、もちろんアレサの歌唱も、すべてが素晴らしすぎ。ソウル・ミュージックってものがどんな土壌の上に成り立っているのか、その一端を力強く垣間見せてくれる。涙出てきちゃいます。まじ。
何も再確認する必要もなく、ヒップホップも含めたアメリカのブラック・ミュージック・シーンというのは、パフォーマーも観客もあらかじめこうした下地を持ったうえで構築されているわけだ。このポイントを学ばずして、ソウル・ミュージックを存分に楽しむことはまず不可能かも。
土壌の違うわれわれ日本人リスナーは、本盤とか、ライノから出た3枚組のゴスペル・アンソロジーとか、その辺をとっかかりに、もっともっと深くこの“下地”を学ばないとなぁ。「うるせーよ、そんなの関係ねーよ。知らない人間には知らないなりの楽しみ方があるんだよ」と勢いまかせに反論するワコードたちもいることとは思いますが、もちろんそういう聞き方があることはわかったうえで、でもぼくはそれじゃもったいないと思うのだ。ソウル・ミュージックが好きだと思っていても、実はとんでもなく大切な魅力を見逃してしまっているのかもしれないし。
それはソウルに限らず、ロックに対するカントリーとか、ジャズとか、クラシックとかも含めて、ね。ポップスは学習ですよ、まじに。