Disc Review

Play On... / Scott McCarl (Titan/Thunderbird/RPM)

プレイ・オン…/スコット・マッカール

表ジャケットのアーティスト名の下に、赤字でしっかり“元ラズベリーズ”と記されているのだけれど。ウソじゃない。ラズベリーズ、4枚目の(そして最後の)アルバム『スターティング・オーヴァー』のころ、メンバーとしてけっこう活躍していたスコット・マッカールのソロ・アルバムだ。

当時は左利きのベーシスト&ヴォーカリストとして、見た目はポール・マッカートニー、歌声はジョン・レノンって感じでがんばっていた。今回のソロ作のタイトルにもなっている「プレイ・オン」は、『スターティング・オーヴァー』に収められていたかっちょええパワー・ポップ曲のタイトルだけれど、あの曲を筆頭に、スコットさんはエリック・カルメンと組んで、レノン/マッカートニーよろしくそれなりの佳曲をバンドに提供していたものだ。「クライ」って曲も好きだった。スコット単独で書いた「ローズ・カラード・グラシズ」もよかった。

で、そんなスコットさんがリリースした盤。基本的には97年に録音された10曲を中心に据えたものだが、ボーナス・トラックとして69年から81年までに録りためられたスタジオ音源や宅録音源などが7曲加えられている。

新録曲の中では、「ラン・フォー・ザ・サン」「アイル・ビー・オン・マイ・ウェイ」など、ラズベリーズ同様クリーヴランドを本拠にするジ・アクションのメンバーだったブレント・ウォーレンがらみの曲がいい出来。ルビヌーズがバックをつとめる「イン・ラヴ・ウィズアウト・ア・ガール」あたりも、もろのパワー・ポップ・サウンドに仕上がっていて、思わず頬がゆるむ。

本盤に先駆けてパワー・ポップ・コンピレーション『イエロー・ピルズ』で披露されていたラズベリーズ・ナンバー「ノーバディ・ノウズ」のカヴァーもいい。これはスコットさんの先任ベーシストだったデイヴ・スモーリーとエリック・カルメンが共作した曲だけれど、スコットのジョン・レノンっぽいヴォーカルがもろにハマっている。さらに、ビートルズ・ナンバー「イエス・イット・イズ」のカヴァーもあり。

古いボーナス音源にもいい曲が多い。ラズベリーズ時代のエリック・カルメンに対する感謝の気持ちを歌った「サンクス・フォー・ザ・ライド」とか、生ギターの3フィンガーで、ポール・マッカートニーよろしくキメていたりして。もう、そのスジのファンの人は要チェックって感じ。モンキーズの「自由になりたい」のカヴァーもある。

まあ、小粒っちゃ小粒な1枚ではありますが。間もなくエリック・カルメン久々のニュー・アルバムも出るし(そのレビューは次に出るミュージック・マガジンに書きました)、新旧パワー・ポップ・アルバムのリリースも続いているし。ぼくは楽しいぞ。

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