Disc Review

Anything Is Possible / Chris Stamey (Label 51 Recordings)

エニシング・イズ・ポッシブル/クリス・ステイミー

1970年代にはテレヴィジョンのリチャード・ロイドや、ビッグ・スターのクリス・ベルとアレックス・チルトン、およびミッチ・イースターらと活動をともにし、1980年代にかけてはピーター・ホルサップルと組んでdB’sの一員となり、1990年代にはウィスキータウンとプロジェクトを立ち上げ、2000年代にはヨ・ラ・テンゴと共演し…。

ノース・カロライナ州チャペル・ヒルの顔役というか、米インディーズ・シーンの重鎮というか、クリス・ステイミーの動きはいつも気になるものだったわけですが。そんなステイミーの新作ソロ、出ました。

今回も参加ミュージシャンの顔ぶれが興味深い。盟友ドン・ディクソン、ミッチ・イースターを筆頭に、レモン・ツイッグス、マーシャル・クレンショウ、ウィルコのパット・サンソン、ワンダーミンツ〜ブライアン・ウィルソン・バンドのプロビン・グレゴリー、メイフライズUSAのマット・マクマイケルズ、マウンテン・ゴーツのマット・ダグラス、ベン・フォールズ・ファイヴのロバート・スレッジなど。

全11曲中10曲はステイミーの自作曲で、残り1曲がビーチ・ボーイズの「ドント・トーク」のカヴァー。これ、ブライアンがライヴで披露していた、途中に例の未発表コーラス・タグが入っているアレンジで歌われていて。なんでもブライアン・バンドの要、ダリアン・サハナジャからそのコーラス・パートの譜面を送ってもらって、それをレモン・ツイッグスのダダリオ兄弟と、チャペル・ヒル界隈のキーパーソンのひとり、ウェス・ラチョットにハモってもらったものだとか。健’zでもあのパート入りでカヴァーしたっけ。懐かしい。さらにステイミーはダリアンからストリングスのスコアも送ってもらったらしく、けっこう仕込みは本格的だ。

録音はチャペル・ヒルにあるステイミーのスタジオ“モダーン・レコーディングズ”で。管弦も積極的に導入しつつ、フェンダーVIなどの音色をベースと共存させた1960年代ゴールドスター・スタジオっぽいアンサンブルを編み上げながら、往年のさまざまなバロック・ポップ的な感触にアプローチした1枚って感じか。

バンドキャンプに載っていたご本人のコメントがいかしていた。曰く——

「このアルバムは1950年代後半から1960年代半ばにかけて、アメリカ南部で育った自分が家族のターンテーブルやAMラジオで聞いていた、ハーモニーが豊かでありながら歌詞はどこか無垢なポップ・ミュージックへのラヴ・レターです。その後、そうした楽曲たちの構成要素について深く理解するようになりましたが、最初に出会ったときの魔法のような感動は今も変わりません」

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