
オー・ホワット・ア・ビューティフル・ワールド/ウィリー・ネルソン
間もなく92歳を迎えるウィリー・ネルソン。新作、出ました。今回は全曲ロドニー・クロウェル作品で固めた1枚です。しかも、出来が素晴らしい。いいアルバム。ほんと驚く。脱帽。やー、すごい。
ウィリー翁が初めてロドニー・クロウェルの曲を取り上げたのは、えー、いや、まあ、この人、本当にアルバム・リリース数が多いので正しいかどうか、きわめてあやふやではありますが(笑)、ぼくが認識している限りでは1978年。ロドニーがまだ20代で、ソングライターとして、あるいはギタリストとしてシーンに台頭しつつあった時期。初ソロ・アルバムが出るか出ないか…くらいのときだったような。
ウィリー翁はライヴ・アルバム『ウィリー&ファミリー・ライヴ』で、エミルー・ハリスがアルバム『エリート・ホテル』で歌っていたロドニー作品「ティル・アイ・ゲイン・コントロール・アゲイン」をカヴァーしていた。たぶんそれが最初で。以降、いろいろな形で交流が続いて。去年2枚出したアルバムのうち、前のほう、『ザ・ボーダー』でも、アルバム・タイトル・チューンと「メニー・ア・ロング・アンド・ロンサム・ハイウェイ」という2曲のロドニー作品を歌っていたっけ。
そんな翁による全曲ロドニー・クロウェル作品によるカヴァー・アルバム。ともにテキサス出身の先輩、後輩。世代を超えた沁みるコラボレーションが全12曲、展開されています。
アルバムの幕開けは、ロイ・オービソンが他界する前に録音していたメロディにロドニーがウィル・ジェニングズとともに歌詞をつけて1992年にリリースした「ホワット・カインド・オヴ・ラヴ」。続いて、ジェリー・ジェフ・ウォーカーが1978年のアルバム『ジェリー・ジェフ』で歌っていた「バンクス・オヴ・ジ・オールド・バンデラ」。次がロドニーの2014年のアルバム『タールペイパー・スカイ』に入っていた「ザ・フライボーイ&ザ・キッド」…という具合に、様々なパターンのロドニー作品を満載。
そういえば、この「ザ・フライボーイ…」の他、ロドニー自身もゲスト共演しているアルバム・タイトル・チューンとか、「アイ・ウドゥント・”ビー・ミー・ウィズアウト・ユー」とか、『タールペイパー…』のアルバムを締めくくっていたラスト3曲が全部入ってるな。ウィリー翁、あのアルバムが大好きなのかな。ロドニーの近作からのカヴァーも目立ちます。ロドニーが1997年、マイケル・ローズ、スチュアート・スミス、ヴィンス・サントロと結成したオルタナ・カントリー・バンド、ザ・シケイダスの曲もあり。
他にも1982年にボブ・シーガーのカヴァー・ヴァージョンがヒットした「シェイム・オン・ザ・ムーン」とか、2004年にロドニーがティム・マッグロウに提供した「オープン・シーズン・オン・マイ・ハート」とか、2005年にキース・アーバンに提供した「メイキング・メモリーズ・オヴ・ユー」とか、ガイ・クラークとの共作/競作曲「スタッフ・ザット・ワークス」とか。
プロデュースはいつものように、盟友バディ・キャノン。もちろんハーモニカのミッキー・ラファエルも参加しています。ウィリーの愛器“トリガー”のようなナイロン弦ギターの音色もたくさん聞くことができるのだけれど、ご本人が弾いているのかな。それとも誰か他のギタリストが敬意を表しつつウィリー翁のスタイルで奏でているのか…。
いずれにしても名曲の名演がずらり。相変わらずしびれます。