Disc Review

is / My Morning Jacket (ATO Records)

イズ/マイ・モーニング・ジャケット

昨夜、ヴァン・ダイク・パークスの来日公演をビルボード・ライヴ東京で見て。相変わらず情熱的で、刺激的で、でもロマンチックで、かつリリカルな“脱ボーダー”的な音の広がりに思いきりくらくらさせてもらったわけですが。

とともに彼が、今アメリカを覆いつつあるある種の狂気への雄々しい抵抗をきっちりメッセージしていた様子にも胸が震えて。本当にぼくたちは今、大変な時代を過ごしているんだなということを改めて思い知らされたというか。

マイ・モーニング・ジャケットが、2021年のセルフ・タイトルド・アルバム以来、久々にリリースした10作目のスタジオ・アルバム『is』も、まさに“is”というアルバム・タイトルからして“今、どうあるか”にこだわった1枚みたいで。そこにもヴァン・ダイクの思いに通じるメッセージをぼくは感じました。

浮遊感に満ちたアコースティック・ギターのリフに乗って、ジム・ジェイムスが“海の上を歩いている/砂の中で祈っている/深い愛を誓っている/ぼくの手をとってくれないか?”と静かに歌い出すオープニング・ナンバー「アウト・イン・ジ・オープン」には、“今、何が危機に瀕しているのかわかっている”みたいな歌詞もあって。“両手は汚れているけれど、心はまだ遠く海にある/怖くないふりなんかできない/でも自由でいられる間、生き続けよう/そしてもし君に会えたとして、君はそれがぼくだと気づいてくれるだろうか…”と歌う。

アメリカを含めて世界中が狂気に直面している“今”を、ジム・ジェイムスなりの表現で伝えてくれる1曲という感じで。泣けました。

今回のアルバム、なんと初めて外部からプロデューサーを迎えていて。しかも、それがブレンダン・オブライエンで。今年の1月から毎月1曲ずつ、「タイム・ウェイステッド」「スキッド・インク」「ハーフ・ア・ライフタイム」という3曲を先行で披露してくれていたけれど。わりと方向性はいろいろで。20年前の『Z』を想起させるクラシック・ロック的なものもあったり、ディープで瞑想的なものがあったり。アルバム全体はどうなるのかなぁ…と思っていたら。

オブライエン効果なのか、アルバム全体で接してみるとそれら先行3曲も含め、どの曲も焦点がぐっと絞られた感じというか。深みが増したというか。マイモニのアルバムには必ず何曲か入っていた7〜8分の長尺曲も今回はなし。ジャム・バンド的な要素はぐっと減ったけれど、シンプルなまとまりが見事。

個人的にはオールディーズ・テイストもそこはかとなく漂う胸キュンな「アイ・キャン・ヒア・ユア・ラヴ」とか、ブリージーなアコギのカッティングとベッドルーム・ポップ的なアンサンブルの下で描かれる「ビギニング・フロム・ジ・エンディング」とか、お気に入り曲多数。

やりすぎない感じが、むしろ彼らの…というか、ジム・ジェイムスの個性をくっきり浮き立たせたという、そんな傑作か、と。

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