Disc Review

God Bless Tiny Tim: Expanded Deluxe Mono Version (Re-Press) / Tiny Tim (Now Sounds/Cherry Red)

ゴッド・ブレス・タイニー・ティム~エクスバンデッド・デラックス・モノ・エディション(再プレス)/タイニー・ティム

これはもともと2013年だったかに編纂/再発された拡張エディションの再プレスものですが。

タイニー・ティム! 往年のグレイト・アメリカン・ソングブック系のスタンダード曲からR&B、ロックまで、何から何までウクレレの弾き語りと独特のファルセットを交えた歌声でカヴァーして聞かせる“いかれた吟遊詩人”。

彼が1968年にリリースしたファースト・アルバム(『タイニー・ティムに神のご加護を』という邦題でもおなじみ)の拡張版『ゴッド・ブレス・タイニー・ティム~エクスパンデッド・デラックス・モノ・エディション』が、またまたプレスし直されて入手しやすくなったみたい。日本ではかつてヴィヴィドとかMSIとかが配給してくれていたけれど、今回はソリッドが来週あたりに日本流通盤を出すらしい。特にライナーの訳が付いたりしているわけではないようですが、ありがたいことです。

英チェリー・レッド傘下のナウ・サウンズによるいい仕事。かつてプロモーション用にのみ作られ市販されたことのないモノ・ヴァージョンの初CD化をベースに、シングル・ヴァージョンやインスト・ヴァージョンなど11曲をボーナス追加した拡張エディションだった。クリスチャン・ホフマンのライナーも絶品です。

リチャード・ペリーがプロデュース。これがプロのソングライターとしての初仕事となったポール・ウィリアムス作の「心みたして(Fill Your Heart)」とか、カート・ベッチャー人脈のゴードン・アレクサンダー作の「いちごの紅茶(Strawberry Tea)」とか、ソニー・ボノ作の「アイ・ガット・ユー・ベイブ」のカヴァーとか、当時のコンテンポラリーものから、シングル・ヒットした「チューリップ畑でお散歩(Tip-Toe Thru’ the Tulips With Me)」や、ビング・クロスビーでおなじみ「サンライト・ムーンライト(Livin' in the Sunlight, Lovin' in the Moonlight)」をはじめ、アーヴィング・バーリンやジミー・ヴァン・ヒューゼンらによる往年のスタンダード曲まで、毒気に満ちたノスタルジックな怪演がたっぷり楽しめる。「チューリップ…」のヒットにも後押しされ全米アルバム・チャート7位にランクした大ヒット作だ。

アレンジを手がけたアーティ・バトラーの存在も見逃せない。ゴードン・ジェンキンス作の名曲「ジス・イズ・オール・アイ・アスク」をストリングスを従えフランク・シナトラ気取りで歌ったヴァージョンとか、大好きだった。これを聞いて刺激されたハリー・ニルソンが、当時のロック/ポップス・シーンではまだまだ珍しかった全曲スタンダード・ナンバーのカヴァー集『夜のシュミルソン()』を作ったというのは有名なエピソードだろう。ちなみに、その『夜のシュミルソン』も来週、ソニーの“洋楽隠れ名盤”シリーズの一環として改めて再発されるみたいで。なんだかめでたい。

そのスジのファンはぜひお試しを。ちなみに、下のストリーミングへのURLは今回のナウ・サウンズ盤の内容とは違います。ナウ・サウンズ盤はチェリー・レッド系の常でストリーミングされていません。ブツをゲットしましょう。

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