Disc Review

Easy as Pie / The Surfrajettes (Hi-Tide Recordings)

イージー・アズ・パイ/ザ・サーフラジェッツ

ノージくんに教えてもらったごっきげんなバンドです。

2015年にカナダのトロントで結成されたという女性4人組サーフィン・インスト・グループ。かつて女性参政権実現のために活動していた団体“サフラジェット”と“サーフ”を合体させたグループ名からしてかっこいい。ウイングスがかつて“君こそレディ・サフラジェットだ”とか歌っていた、あれですな。女性にもサーフ・エレキ・インストへの参政権を! 的な?

たっぷり盛ったビーハイヴ・ヘアにゴージャスな眉とつけま、ミニ・スカート、ゴーゴー・ブーツ…という出で立ちで、リヴァーブをふんだんにかましたエレキ・インスト・サウンドを届けてくれる。ネット上にたくさんのパフォーマンス動画がアップされていて。ノージくんによると新作動画が発表されるたび、ビル・フリゼールが速攻“いいね”をするらしく(笑)。それだけでも彼女たちがどれほどいかしてるかわかるってものだ。

ぼくは全然知らなかったのだけど、2017年にEPでデビューして。2018年にリリースしたブリトニー・スピアーズの「トキシック」のインスト・カヴァーがその筋で大いに話題になったらしく。以降、シングル、EPをたくさんリリースしているみたい。アルバムも2022年に『ローラー・フィンク』ってのを出していて。今回出た本作『イージー・アズ・パイ』が2作目だ。

バンドの中心メンバーは、ギターのニコール・ダモフとマッケンジー“シャーミー”フリーマン。ハイスクール時代、ニコールさんがブルース・バンドやっていて、シャーミーさんも女の子ロック・バンドやっていて。そのころからの友達らしい。ベースとドラムはいろいろ代わったようだけど、現在はもともとロカビリー・バンドでばりばりアップライト・ベースを弾いていたというサラ・バトラーと、セイフ・ワーズとかビヨンダラーズとかいろいろなバンドで活躍していたドラマーのアニー・リリスに落ち着いたみたい。

今回、アルバム・ジャケットではメンバー全員がダイナーのウェイトレスさんに扮していて。ノージくんが買ったカラー・ヴァイナルLPにはダイナーのペイパーマットみたいなやつがオマケでついていたし。裏ジャケットのデザインもメニューみたいになっているし。てことで、テーマは食べ物。収録曲すべてタイトルが食べ物がらみです。同郷カナダのロックンロール・バンド、ダラスとトラヴィスのグッド兄弟が率いるザ・セイディーズのインスト曲「クラム・チャウダー」をはじめ、スパイス・ガールズの「スパイス・アップ・ユア・ライフ」、ジョーカーズの「インスタント・コーヒー」、アストロノウツの「ホット・ドッギン」、ナンシー・シナトラの「シュガータウン」の5曲がカヴァーで。残る7曲がニコールさんとシャーミーさん共作によるオリジナル・インストだ。

スパイス・ガールズとかナンシー・シナトラとか、歌もののインスト・カヴァーもエレキの勘所をしっかりとらえているようで。さすがビル・フリゼール師匠が目をかけるだけのことはあるって感じ。もちろんオリジナル曲もナイス。

オフィシャルWEBサイトを見てみたら、この人たち“ツアーに出ていないときは、彼女たちのシークレット・ビーチの小屋で薪割りをしたり、新しいミニ・スカートを縫ったり、ヴィンテージ機器のことを語り合ったり、クエンティン・タランティーノの映画に出て演奏することを夢見たりしている”とか書いてあって。いいよねー。応援したくなります。

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