NBPファイル vol.108:追悼 ハービー・フラワーズ
セルジオ・メンデスさんとか、川添象郎さんとか。ポップ音楽の世界で、確実に歴史を作った方々の訃報が続いています。
もちろん誰にでも旅立ちの時はやってくるわけで。それが人生というものなのだけれど。そうした偉大な個性の訃報に接するたび、ひとつの時代の終わりみたいなものを思い知らされるばかり。
さらにもうひとり、先日、英国のベーシスト、ハービー・フラワーズの訃報も届いて。またまた淋しい気持ちになってます。
1938年、英国ミドルセックス生まれ。18歳のころ入隊した英国空軍の楽隊でチューバを担当したのがミュージシャンへの第一歩。除隊後、そのまま音楽界入りして、チューバ同様、低音部を担うウッド・ベースやエレクトリック・ベースを演奏するようになって。
1960年代後半からはセッション・プレイヤーに。ミッキー・モスト、リチャード・ペリー、ガス・ダッジョン、トニー・ヴィスコンティといったプロデューサーのもとでスタジオ・ワークを多数手がけてきた。ロジャー・クックとマデリーン・ベルがフロントを張っていたブルー・ミンクのメンバーだったこともある。1977年、最終期のT.レックスのメンバーとしてもクレジットされていた。
けど、この人はやはりセッション・ベーシストとしていい仕事をたくさん残していて。いちばん有名なのが、ルー・リードの「ワイルドサイドを歩け(Walk on the Wild Side)」のウッド・ベースとエレキ・ベースを巧みに組み合わせた例のベースライン。あと、デヴィッド・エセックスの「ロック・オン」での空ピックと高音・低音を絶妙に組み合わせたラインとか、デヴィッド・ボウイの「スペース・オディティ」での歌うようなフレージングとか…。
他にもダスティ・スプリングフィールドとか、エルトン・ジョンとか、ハリー・ニルソンとか、キャット・スティーヴンスとか、ポールとジョージとリンゴらソロ・ビートルたちとか、多彩なアーティストをサポートしまくってきた、まさにポップ・ヒストリー縁の下の力持ち。自身のソロ・アルバムなどもいろいろあったりして。
そんなハービーさんが9月5日、亡くなった。享年86。
というわけで、スロウバック・サーズデイ恒例NBPプレイリスト、今週はハービー・フラワーズがベースを手がけた曲の中からほんのほんの一部、12曲をピックアップして並べたセレクションです。ハービーさんの卓抜したベースライン作りに改めて接して、彼の偉大さを再確認しましょう。
どうぞ安らかに…。
R.I.P. Herbie Flowers 1938-2024
- Walk on the Wild Side / Lou Reed (1972)
- Rock On / David Essex (1973)
- Space Oddity / David Bowie (1969)
- Jump Into the Fire / Harry Nilsson (1971)
- Wrack My Brain / Ringo Starr (1981)
- Between the Devil and the Deep Blue Sea / George Harrison (2002)
- Going Quietly Mad / Al Kooper (1971)
- Carrie / Cliff Richard (1979)
- When She Walks in the Room / Bryan Ferry (1978)
- Look What They've Done to My Song, Ma / Melanie (1970)
- How Many Times / Cat Stevens (1973)
- Country Comfort / Elton John (1970)