Disc Review

My Light, My Destroyer / Cassandra Jenkins (Dead Oceans)

マイ・ライト、マイ・デストロイヤー/カサンドラ・ジェンキンス

たぶん多くの方同様、ぼくは2021年に話題になった前作『アン・オーヴァーヴュー・オン・フェノメナル・ネイチャー』でこの人のことを初めて知ったのだけれど。

ブルックリンを拠点に活動するシンガー・ソングライター、カサンドラ・ジェンキンス。でも、驚いたことに『アン・オーヴァーヴュー…』をリリースしたとき、まだフル・アルバムとしては2作目だったにもかかわらず、音楽仲間の突然の他界など、いくつものショッキングな出来事が重なったこともあり、もうこれを最後の作品にしようと考えることすらあったのだとか。

でも、想像以上に多くの人の心に自分の音楽が確かな手応えをもって届いたことに励まされ、長いツアーを終えて、彼女はふたたびレコーディング・スタジオへ。本作の制作にとりかかった。

ただ、前作のレコーディングとツアーですべてを出し切ってしまった彼女は、当初この新たなレコーディングも思うように進められず。すべてをいったん白紙に戻し、ヴァガボンやロレイン、ユミ・ゾウマなどを手がけてきたプロデューサー/エンジニア、アンドリュー・ラッピンとともに仕切り直し。

前作ではブラスやストリングスなどを交えつつも、しかし静謐できわめてパーソナルな世界観を構築していたのに対し、今回はぐっとバンド寄りの感触だ。ラッピン、前作のプロデュースを手がけたジョシュ・カウフマン、エル・ケンプナー(ペイルハウンド)、メグ・ダフィ(ハンド・ハビッツ)、アイザック・アイガー(ストレンジ・レンジャー)、ハッシュパピーことゾー・ブレチャー、ダニエル・マクダウェル(エイメン・デューンズ)、ライラ・ラーソン、ケイティー・フォン・シュライシャー、ジェシー・フレンチ、マイケル・コールマンらインディ・ロック・シーンの仲間たちとともに外向きな音作りを展開している。

多彩な個性が関わったことでインディー・ロック、チェンバー・ポップ、ライト・クラシカル、オルタナ・カントリー、ソフィスティポップ、ジャズなど幅広いジャンルを無理なく融合させた1枚が完成した。前作はブルックリンのインディ・レーベル、バ・ダ・ビン・レコードからのリリースだったけれど、今回はミツキとかフィービ・ブリジャーズでおなじみ、デッド・オーシャンズに移籍してのリリース。

光と破壊者、というアルバム・タイトル通り、様々な意味合いでの二面性というか、アンビヴァレンスというか、歌詞的にもサウンド的にもそうしたものをテーマに据えながら独特のヴィジョンを提示してみせてくれる。

ラフ・トレイドから5トラック入りのボーナス・ディスク付きエディションも出ているみたい。チェックしなくちゃ…。

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