『エリス』29号のお知らせ
ぼくが編集長をつとめるフリー(無料)のオンライン音楽雑誌『エリス』(年3回発行)の最新29号、本日配信開始です。いつものディスク・レビューをお休みして、告知させていただきますね。
日々、ぼくもこういうブログとかで音楽に関するもろもろを、まあ、発信というか、つらつら書かせてもらったりしているわけですが。ネット上で文章を読んでいただくということになると、あまり長文はなぁ…という感触は確かにあって。内容的に、どうしても浅瀬でちゃぷちゃぷしておしまい、みたいな(笑)。そうなりがちだったりします。
ネット上の音楽サイトの大半が、プレス・リリース的なものを疑いなくそのまま転載するインフォメーション・サイト化してしまっていることの背景にも同じ事情があるのかも。加えて、いつごろからか“語る/論ずる”という行為に対して誰もがひどく怠惰になってしまった世間の空気感もあり。
音楽を熱く語ること。マニアックに論ずること。かつては当たり前に見受けられたこうした行為が、昨今、なぜだかやけにダサく、古くさく感じられるようになってしまいました。でも、LINEのスタンプでは表しきれない微妙な思い、ツイッターの140文字では綴りきれない深いディテール…。そうしたものはあります。確実にあります。
と、そんな思いをできるだけ多くの方と交錯させ、お互い音楽ファンとしてスキルアップしていくためのメディアとして機能すればいいな、と思いながら毎回『エリス』の編集作業など、させていただいているわけですが。
手前味噌ではありますが、最新号も面白いです。執筆者みなさん、全力で語り、論じてます。ぜひ、チェックしてみてください。なにせ、無料ですから。メールアドレスさえ登録していただければ、ネット上で無料で楽しんでいただけます。詳細はエリスのホームページ、「http://erismedia.jp/」まで。
今回のラインアップとしては、まず巻頭の特集として、僭越ながらぼく萩原健太が、連載陣のひとりである水口正裕くんと、今から半世紀ほど前にシーンを賑わした“アメリカン・ニュー・シネマ”に関して再検証させてもらった対談記事があって。
もうひとつの目玉が、天辰保文さんによるジェイソン・イズベルへのインタビュー記事です。イズベルといえば、現在もっとも注目を集めるアメリカーナ系シンガー・ソングライター。先日、初来日してたった一夜のコンサートを披露してくれたばかり。そんな彼が、マッスル・ショールズのフェイム・スタジオとソングライター契約を結んだことをきっかけにスタートした興味深いキャリアをたっぷり語ってくれています。
あとは鉄壁の連載陣。執筆者の50音順にざっくりご紹介しておくと——。
- 天辰保文「誰の二番目でもなく」第3回は、ごきげんな英国ルーツ・ロック・バンド、“ヘッズ、ハンズ&フィート”をピックアップ。
- 岡本郁生「僕のリズムを聞いとくれ」第17回は、ドミニカ共和国のスーパースター、ファン・ルイス・ゲーラについて。
- 亀渕昭信「どうしても聴いておきたいアメリカン・ポップス1001」第22回は、昨年のリル・ナズXの快挙へと連なる、レイ・チャールズ、ドン・ギブソン、ジム・リーヴス、マーティ・ロビンスらによる往年のカントリー・ヒット5曲。
- 北中正和「音楽の未来を探して」第9回は、台湾ポップスの現在と社会との関わりについて。
- 高田漣「Gジャン放浪記〜楽器オタクの雑記帳」第13回は、エディ・ヴァン・ヘイレンをめぐる超マニアックなギター話。
- 能地祐子「オレに言わせりゃクラシック」第12回は、自著『アメクラ』でも大きくフィーチャーしていたヤニック・ネゼ=セガン、アラン・ギルバート、グスターヴォ・ドゥダメルの現在。
- ピーター・バラカン「読むラジオ」第28回は、ジョン・ヘンリーへの貴重なインタビュー。
- 水口正裕「ブロードウェイまで12時間と45分」第22回は、シンガー・ソングライター、ロス・ゴランが作詞作曲・脚本を手がけたオフ・ブロードウェイ・ミュージカル『The Wrong Man』のことなど。
- 鷲巣功「旧聞ゴメン」第22回は、AI美空ひばりをめぐる是非と、ケン・バーンズのドキュメンタリー『カントリー・ミュージック』について。
ぼくの連載「ソングライター・ファイル」は今回はお休みです。巻頭のニュー・シネマの記事が長くなりすぎちゃったもんで(笑)。その巻頭対談に即したSpotifyのプレイリストも作ってみました。読みながら、併せて楽しんでいただけたらうれしいです。