
ザ・40thアニヴァーサリー・コンサート…アンド・ビヨンド/ザ・スポンジトーンズ
1980年にデビューした“米ノースカロライナのビートルズ”ことザ・スポンジトーンズ。
けっしてメジャーな存在というわけではないけれど、オンステージ山野とかに通っていた人には超おなじみかも(笑)。ポップで、キャッチーで、でも超マニアックなアルバムをぽつりぽつりとリリースした後、2009年に『スクランブルド・エッグズ』を出して。そのあと来日したりもしていたから、まだまだ新作に期待できるかなぁ…と、ぼんやり思っていたものの。あれ以来、スポンジトーンズ名義のアルバム・リリースは途絶え。
中心メンバー、ジェイミー・フーヴァーとスティーヴ・ストッケルが、ジェイミー&スティーヴとして、あるいは各々ソロとしてアルバムを出してくれてはいたけれど、年齢もけっこう…って感じだし、スポンジトーンズとしての活動はもうないのかも、と覚悟し始めておりました。
が、今年の5月に突如、スポンジトーンズ名義の新録ニュー・シングル「ルルズ・イン・ラヴ」(スティーヴ作)が出て。ジェイミーをフィーチャーした「ヘルプ・ミー・ジェイニー」がすぐに続いて。さらにパット・ウォルターズがリードをとった「オネスト・ワーク」も出て。うおーっ! と盛り上がったファンも、まあ、ごくごく一部かもしれませんが、いらっしゃることでしょう。
でもって、ついにアルバムも登場! それが本作『40thアニヴァーサリー・コンサート…アンド・ビヨンド』だ。今年になって出た3曲のシングルが“ビヨンド”で。あとは文字通り、デビュー40周年を祝して過去レパートリーを演奏しまくったライヴ音源で構成された1枚。
つまり、スポンジトーンズの過去、現在、未来を凝縮したアルバムなわけだけれど。いや、まあ、そうは言っても、スポンジトーンズだからねー。過去と現在と未来の区別なんか一切ないというか。ほとんど一緒というか(笑)。さすがにキーは少し下がっているとはいえ、あとは何ひとつ変わらない。不変だからこそのスポンジトーンズ。不変のパワー・ポップ・スピリット。痛快です。
2021年、地元ノースカロライナ州シャーロットのマッグロホン・シアターでのデビュー40周年記念パフォーマンスでレコーディングされた18曲の選曲が、とにかくごきげんだ。内訳としては、1982年の大傑作ファースト・アルバム『ビート・ミュージック』から6曲、1995年の『スポンジ・ギター(Textural Drone Thing)』から3曲、1991年の『オー・イエー!』と2005年の『ナンバー9』からそれぞれ2曲ずつ。で、1984年のミニ・アルバム『トーン・アパート』、1987年の『ホエアエヴァー・ランド』、2000年の『オッド・フェローズ』、2008年の『トゥー・クレヴァー・バイ・ハーフ』、2009年の『スクランブルド・エッグズ』からはそれぞれ1曲ずつ。ばっちりじゃないですか。
スタジオ録音のほうは、最新メンバーであるエリック・ウィルヘイムがドラムを叩いているけれど、ライヴのほうは公演の数カ月後、2022年に癌で他界してしまったクリス・ガージズ(2014年加入)のプレイ。そんなこともあって、アルバムはクリスの思い出に捧げられている。どちらのドラマーも加入以前から続くスポンジトーンズの歴史をきっちりリスペクトしたプレイを聞かせてくれていて。ぐっときます。