Disc Review

Lonely Boy: The Asylum Years Anthology / Andrew Gold (Esoteric Recordings/Cherry Red Records)

ロンリー・ボーイ〜アサイラム・イヤーズ・アンソロジー/アンドリュー・ゴールド

すでに本ブログにいつも掲載しているCRTインフォメーションで読んでくださっているかもしれませんが。来週の月曜日、8月17日、リモートCRTの第三弾が有料配信されます。今回もどうなることやら、またまた新たなアプローチなのでよくわかりませんが(笑)。なーんと、ゲストに佐橋佳幸がやってきます。

今さらながらではありますが。CRTというのは“カントリー・ロッキン・トラスト”というのが、まあ、正式名称。1970年代に一世を風靡したカントリー・ロックも、当時大いに米国のシーンを賑わしていたオルタナ・カントリーも、なんだかあまり顧みられることがなかった1990年代末、そのあたりの音楽の魅力を日本でも盛り上げたいものだね、ということで。趣旨に賛同してくれるミュージシャンや音楽ライターと“The Country-Rockin' Trust”なる親睦サークルを作った。それが1997年。

ライヴを催したり、CD再発を企画したり、様々な盛り上げ活動を続けるなか、1999年、レコード・コレクターズ誌の協力を得てスタートしたのがレコード・コンサート・イベントが“CRT & レココレ・プレゼンツ”イベントなのでありました。

で、その立ち上げの時期、ともに盛り上がった創設メンバーのひとりが、佐橋佳幸。もともとはサハシやDr.kyOnがザ・ホーボー・キング・バンドとして参加していた佐野元春のコンサート・ツアーの控え室で、ツアー先の中古レコード屋さんなどで入手した1970年代アメリカン・ロックの名盤をかけながらロック談義に花を咲かせていたらしく。そんな光景を、ツアーに同行していた能地祐子が目撃。この楽しみをトーク・ライヴハウスに持ち込んだのがCRTである、とも言えて。

ということで8月17日は、サハシ・イズ・バック! 的な、うれしい夜。もちろん、過去何度かCRTにも出演してくれているサハシですが。会場をRock Cafe LOFTに移してからは初登場。CRTのGM(最近は半沢フィーバーのもと、“頭取”という呼称を好んでいるようだけれど)であるノージのツイートによれば——

日本全国どこのロック・バーに行っても、まず3度に1度以上は“先日サハシさんがお見えになったんですよ。ギターの”と言われるという、このロック・バー界の座敷童のようなギタリストを一度はぜひRock Cafe LOFTにお誘いしたいと前々から思っていたのです。

とのこと(笑)。もちろん、ギター抱えてやって来てくれる予定なので、お楽しみに。音楽好きが集まるロック喫茶に、ギターを抱えた流しの渡り鳥がやってきて、てんやわんや…。そんなイメージでもりあがりましょう。たぶん最初で最後の贅沢企画、どうぞお見逃しなく! 視聴チケットはこちらで。今回はアーカイブ期間も長めです。詳細はPCのブラウザでご覧の方は右側のサイドバー、スマホでご覧の方は下のほうにあるCRTインフォメーションをご参照ください。

で、サハシとは他にもいろいろタッグを組んでやらせてもらっていて。リモートCRTの翌日には東京・目黒のBlues Alley Japanで「ケンタ&サハシの・オタクの御託・承ります@目黒BAJ」の第2回目。三沢またろうをゲストに迎えて、ワケのわからないパーカッションを題材にあれこれ盛り上がります。

あと、これはちょっと先の話になりますが。本ブログでよく取り上げている無料のオンライン音楽雑誌『エリス』。11月アタマごろ出る予定の次号でも、佐橋佳幸に執筆者として原稿を書いてもらうことになっています。テーマは実にサハシらしい、1970年代後半の米西海岸サウンドのキー・パーソンのひとり、アンドリュー・ゴールド。

アンドリュー・ゴールドって人の存在はなかなか微妙で。ソロ・パフォーマーでもあり,セッション・ミュージシャンでもあり、ソングライターであり、アレンジャーであり、プロデューサーであり…。その立ち位置の取り方の絶妙さというか、キャッチーさとマニアックさの混ざり具合というか、そのあたりの案配が、なるほどサハシっぽいというか。アンドリュー・ゴールドという存在を中心に据えて1970年代後半の米西海岸シーンを振り返る原稿を書いてもらうには、もう、サハシは絶好だな、というか。

まあ、まだまだ先の話ではありますが、こちらもお楽しみに。で、なんと、今日はここまでが長い長い前フリで(笑)。ここからが主題。そんなサハシの来たるべき原稿への予習に最適なアンソロジーが出た、と。そういうお話です。

英チェリー・レッドが編纂した6CD+DVDという7枚組『ロンリー・ボーイ〜アサイラム・イヤーズ・アンソロジー』。その名の通り、アンドリュー・ゴールドがアーティストとしてアサイラム・レコードに在籍していた1975年から1980年までの音源を総まくり。同趣向の再発はこれまでもなくはなかったけれど、今回は充実度からいっても最高かな。

内容としては、CD1が1975年の『アンドリュー・ゴールド・デビュー(Andrew Gold)』、CD2が1976年の『自画像(What’s Wrong With This Picture)』、CD3が1978年『幸福を売る男(All This and Heaven Too)』、CD4が1980年の『風にくちづけ(Whirlwind)』。ここまでがオリジナル・アルバム群。ライヴ音源がボーナス収録されている盤もあり。

で、CD5が“アウトテイクス&アンリリースド・レコーディングス”。アウトテイク、デモ、初期ヴァージョン、別テイクなどが14トラック収められている。CD6は“ライヴ・レコーディングス1976〜1977)”。ロサンゼルスでの1977年ライヴとロンドンでの1976年ライヴの音源だ。DVDにはプロモ・ビデオ群と、『オールド・グレイ・ホイッスル・テスト』出演時のパフォーマンスおよびインタビューを収録。

ポスターと64ページのブックレット付き。アンドリュー・ゴールドの歩みとともに、この時期の西海岸サウンドの変移の過程がじんわり伝わってきて面白いです。今年に入って、Omnivore Recordingからいろいろと貴重なデモ音源なども連発されているアンドリュー・ゴールドの才能を再評価するいいチャンスかも。いい曲、多いから。ほんと。

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